地元の八戸が好きだ。
どのくらい好きかというと、38年間生きてきたすべての正月を八戸で迎えている。自分でも書いててびっくり!すごい!
実家のある青森県八戸市までは、東京駅から新幹線で2時間50分くらい。結構時間がかかるけど、18歳で上京した20年前には東北新幹線が盛岡までしか伸びてなくて、盛岡で乗り換えたことを考えると、一本で帰れるのはすごい楽ちん。良い時代になったなぁ。
八戸の冬はやっぱり寒い。新幹線で降りたつと横浜の寒さとは段違いの「刺すような空気」にびっくりする。でもこの寒さが八戸のいろんな文化を育ててきた感じがする。冬のお祭りも多いしね。
八戸のその文化の一つは日本酒だと思う。水質の良さも相まって八戸市内には日本酒の蔵が2蔵、周辺の町の蔵を含めると4蔵ほどあります(戦前はもっとあった!)。その中の一つ「八戸酒造株式会社」は同級生が蔵元という事もあり、もうかれこれ10年くらいお世話になっている。本日はそんな話を書いていきます。(ちょっと長いよ)
日本酒との出会い
今でこそ大酒飲みだが、実は22歳くらいまでお酒が苦手だった。ビールも「こんな苦いもんよく飲めるな」と思っていたくらい。日本酒なんて悪酔いするお酒の代表だと思っていた。今だと本当に信じられないけどそういう時期もあったのだ。きっとみんなにもそんな時期があったはず。
そんな僕が「お酒っていいかも」と思ったきっかけが、真澄との出会いだった。忘れもしない22歳のとき、京都の任天堂と仕事をしていて、その打ち上げの席でおすすめされたのが真澄だった。(なぜ京都で真澄?と思うかもしれないけど、お店のおすすめリストにあったんす)
真澄は「淡麗辛口」と呼ばれるタイプの日本酒で「こんなに飲みやすくてすっきりとしたお酒もあるんだなー」と一気に日本酒に対するハードルが低くなった思い出がある。それを境に飲む機会があればちょくちょく日本酒を嗜むようになった。(必然的に度数の弱いビールもイケるようになった)
八戸市の近くの五戸町にある「菊駒酒造」もそういうタイプで、すっきりして美味しいことから、地元でもかなり人気の高いお酒である。(明確な統計はないけど、八戸市民の7割は同意してくれるはず)
八戸のみならず、日本中から人が訪れる名店「ばんや」では、菊駒や青森県のお酒が飲めたりする。行かれた方のブログのリンクを貼っておくので、もし興味を持ったら八戸にお越しの際はぜひ一度伺ってほしいホントおすすめ。(ばんや、2017年の夏に閉店してしまいました。残念…)
「芳醇旨口」タイプの日本酒に衝撃を受けたあの日あの時
「芳醇旨口」タイプという日本酒がある。香りが豊かでボディも厚く、お米の個性や酵母の個性が良くでているものだ。現在の地酒ブームを支えているお酒はこのタイプを目指して作られている物が多い。11年前くらいに高木酒造の造る「十四代」を飲んで「なんじゃこりゃ!」と思ったもんだ。それくらいインパクトがある美味しさだったのだ。
地元好きとしては、「地元の蔵にもこういうお酒を造ってほしいな~」と思ったけれど、正直なところ「こういうお酒は絶対に作らないだろうな~」とも思っていた。
なんでかというと、地酒は基本的に地産地消なことがほとんど。石高(作る量)がそれほど多くないから地元以外に出回りにくいので、地元の漁師さんが好むような「男酒」系の強い感じのタイプや「端麗辛口」タイプが主力商品。地元の蔵の人はこういう「芳醇旨口」タイプのお酒が地元では売れない事をよーく知っているからである。
そんな中、八戸酒造株式会社が「陸奥八仙」というブランドで「芳醇旨口」タイプを売り出していることを知った。八戸のお酒を首都圏向けに売り出そうと、同級生の蔵元の駒井秀介くんが色んな試みをやってたのだ。今でこそ雑誌やお店で見かけるようになったけど、あの時の小さな一歩の積み重ねで今の人気があるんだと思うと、感慨深く思わずグッときてしまう。
次男の伸介くんも蔵元杜氏として酒造りに参加していて、ワイン酵母を日本酒に使用したり、古米を復活させてみたりと、とてもアグレッシブな酒造りをしている。蔵人には若い人も多くちょっとしたベンチャー企業のような雰囲気があって、面白い会社になってるなーと感心する。
ここ10年くらい微力ながら、Web周りや、TwitterとかfacebookのSNS、地元限定ラベルを一緒に作ったりとか、小さなお手伝いしてきたので、ここ最近のの躍進は本当にうれしい。
3年前、地元限定のラベルを地元の版画家さんと一緒に作ったもの。作るにあたって会社の人たちにもいろいろアンケートしてカラーを決めたりしてた。楽しい思い出。
実際に販売されたラベル。シブい。
今年、陸奥八仙はIWCのトロフィー賞を含む日本酒関連の賞を複数受賞しました。めでたい。IWCがどんなコンペティションなのかは下記を見るとわかります。
恒例の大忘年会に参加してきたよ
毎年12月30日の夜は蔵元で関係者だけの忘年会が開かれる。ただの飲み会ではなくその年話題になった日本酒を集めて、飲み比べてみる会になっている。
こんな感じで北から南までの日本酒がずらっと。
自分たちの蔵のお酒はもちろん、かなり珍しいお酒もそろえている。是非画像をダウンロードして、みなさんの日本酒ライフに役立ててほしい。
酒のつまみも地元の魚のお刺身や、オードブルなどに加えて、
魚忠さんの大間のまぐろの赤身、中トロ、大トロの盛り合わせもいただいた。こちら楽天市場で購入可能です。山本さんの笑顔はプライスレス。
こちらの塩うに。塩うにの概念を覆す美味しさでした。八戸の塩うにに比べてかなり甘口。
お酒が醸す人の和
僕はこの会にありがたいことに2012年からもう4回お呼ばれされていて、たくさんの面白い方とのご縁があった。
こちらのHさんはヘリや航空機のエンジニアの仕事をされているのだが、仕事で「南極観測船しらせ」に乗って南極に行って氷山をてんぷら油を使ったチェーンソーで切ってお酒の氷として使ったとか、趣味の木工で包丁の柄をデザインして土佐の包丁の会社とお付き合いしていたりとか、なんだかとっても面白い人生を送っていらっしゃるので、いつも話が弾んでしまう。
1回りも違う人生の先輩だけど、お酒の力をちょっと借りて素敵な人の話を聞く事が本当に楽しい。最近「飲みニケーション」なんて死語になりつつあるけど、こういう腹を割れる雰囲気がとても好きだ。
現在は徳島に単身赴任されているそうなので、ご厚意に甘えて、今度お邪魔しようと思っている。今年は本当に日本中を旅した年だった。来年もそんな年にしたい。
みんなも日本酒作ろうよ
この忘年会には「がんじゃ自然酒倶楽部」という、八戸酒造株式会社の「蟹沢地区」にある自社田で、自分たちで酒米を育て自分たちでお酒を造るという、体験型プログラムの会員の方は参加可能。来年は僕もお米を育ててお酒を作るので、このブログを読んでいる日本酒造りに興味あるみなさん、ぜひ一緒にいかがですか?
興味ある方がいましたら蔵のページから申し込んでみてください。
ほんとうによく飲んだ!楽しかったー!
もう2016年もあとわずか。是非みなさんも良い日本酒で、良いお正月をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。どっとはらい。